先日、ある社長から「もう取り返せないんですか?」という電話をもらいました。
収益マンションを売却して1億円の利益が出た。ただ、保有期間がちょうど3年だったため、税理士から「もう少し待てばよかったですね」と言われた。その言葉の意味が気になって連絡してきたというわけです。
結論から先に言うと、その言葉は正確でした。そして、その差は1,900万円にも及んでいました。
保有3年と5年超、その差が1,900万円になる理由
不動産を個人で保有して売却する場合、「売却した年の1月1日時点で保有5年を超えているかどうか」によって税率が大きく変わります。
5年以下であれば「短期譲渡」となり、所得税・住民税を合わせた税率はおよそ39.63%。5年を超えていれば「長期譲渡」となり、税率は約20.315%まで下がります。
この社長のケースを当てはめてみましょう。売却益は1億円です。
- 短期譲渡(保有3年):税率約39% → 税金はおよそ3,900万円
- 長期譲渡(保有5年超):税率約20% → 税金はおよそ2,000万円
その差は1,900万円。あと2年待つだけで、手元に残るお金がこれほど変わります。同じ不動産、同じ売却額なのに、です。
「5年超」の起算日、ここで間違える社長が多い
ひとつ注意していただきたいのが、5年の数え方です。
よく「購入してから5年」と思われているのですが、正確には「売却した年の1月1日時点で保有期間が5年を超えているかどうか」で判定します。つまり、1月2日に購入した不動産を翌々年の1月1日に売ると、暦の上では2年経っていても、判定上は1年しか経っていないとみなされるケースがあります。
購入日が年の後半に近いほど、この「起算日の罠」に気をつける必要があります。売却を検討し始めたら、まず購入時の契約書や登記簿で取得年月日を確認し、翌年1月1日時点での保有年数を正確に計算することをおすすめします。
売却益が大きいほど、タイミングのインパクトは膨らむ
今回の事例は売却益1億円でしたが、たとえば売却益が5,000万円の場合でも、短期と長期の税額差は約950万円になります。
不動産の売却益というのは、取得価格や減価償却の累積によって予想外に大きくなることがあります。「そこまで利益は出ないだろう」と思っていたら、実際に計算してみると数千万円になっていた——というのは珍しくない話です。
だからこそ、売却を具体的に検討し始めた段階で一度税理士に試算を依頼することが大切です。タイミングをずらせるかどうかも含めて出口戦略全体を設計することが、結果として大きな節税につながります。
法人保有の場合は、また別の視点が必要
ここまで個人保有の不動産を前提に話してきましたが、法人名義で保有している場合、この短期・長期の区分は原則として適用されません。法人の売却益は他の所得と合算されて法人税の対象となるため、個人とは異なる出口戦略が必要です。
「法人に移せば節税になる」という話を耳にすることもありますが、法人への移転自体にも税務リスクや移転コストが伴うため、安易に動くと逆効果になることもあります。個人か法人か、どちらに保有させるかという判断は、そもそも購入段階から設計しておくのが理想です。
不動産を売る前に、まず保有開始日を確認してみてください。「あと数ヶ月待てばよかった」という後悔だけは、絶対に避けてほしいのです。タイミング一つで手元に残る金額が何百万・何千万と変わる——それが不動産譲渡税の本質です。売却の話が具体的になってきたら、早めに税理士に相談することを強くおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。