先日、愛知県で製造業を営む中山社長という方からこんな話を聞きました。
「20年間、固定資産税の通知が届くたびに、一切疑わず払い続けていました。そういうものだと思って」
その中山社長が、ある日を境に約200万円を取り戻しました。裁判でも交渉でもなく、正当な手続きで。
「払って当然」が最大の落とし穴
固定資産税というのは、不動産や工場設備などを持っている場合、毎年1月1日時点の所有者に課せられる地方税です。
中山社長の工場は、30年以上使ってきた鉄骨造りの建屋。毎年春になると市から通知書が届き、その金額を疑うことなく払い続けていました。
問題は、その金額の根拠となる「評価額の計算」にありました。
3年に1度の見直しが「見えにくさ」をつくる
固定資産の評価は、3年に1度のタイミングで市区町村が見直す仕組みになっています。「評価替え」と呼ばれるこの作業ですが、実は自治体側の計算ミスや、建物の実態と評価の乖離が生じているケースが少なくありません。
中山社長の場合、工場建物の床面積に計算上の誤りがあることが発覚しました。実際の床面積より大きい数値で長年計算されていたのです。
厄介なことに、固定資産税の評価は毎年同じ書類が届くため、「去年と同じ金額だから問題ない」と思い込みやすい。少し増えていても「評価替えがあったから」と受け流してしまう。このサイクルが20年間続いていたわけです。
税理士が明細を見た「その日」に発覚した
きっかけはシンプルでした。顧問税理士が決算準備の中で、固定資産税の明細を精査したのです。
通常、固定資産税は経費として処理するだけで詳細を確認しないケースが多い。でもその税理士は、課税明細書に記載された床面積を実際の建物と照らし合わせた。そこで数字のズレに気づきました。
市区町村へ是正を申し出たところ、手続きが認められ、過去5年分の過払い分として約200万円が還付される結果になりました。
「自分の工場は大丈夫」とは言い切れない
少し視野を広げて考えてみてください。固定資産税の課税ミスや計算誤りは、特別なことではありません。自治体の担当者も人間で、膨大な件数を処理する中でミスが起きることがある。問題は、そのミスが「気づかれないまま放置される」構造にあることです。
特に次のどれかに当てはまる場合は、一度確認してみる価値があります。
- 工場や倉庫などの建物を長年所有している
- 増改築をしたが固定資産税に目立った変化がなかった
- 課税明細書をそのままファイルに綴じるだけになっている
- 顧問税理士に一度も「固定資産税の確認」を依頼したことがない
どれかひとつでも当てはまるなら、確認するだけで損はありません。
還付を受けられる期間は「5年」が目安
固定資産税の過払い分を還付してもらえる期間には、目安として5年という区切りがあります。地方自治法の時効がベースです。
今年確認すれば過去5年分が対象になりますが、来年に持ち越せば1年分が時効にかかる可能性があります。「いつか確認しよう」は、実はじわじわと損をしている状態です。
200万円を5年で割ると、毎年40万円。それが時効で消えていく計算になります。
顧問税理士に「明細を見てほしい」と一言だけ
難しい手続きは必要ありません。毎年届く固定資産税の課税明細書を税理士に見せて、「一度精査してほしい」と依頼するだけです。
税理士によっては固定資産税の確認まで踏み込んでいないケースもありますが、社長側から「やってほしい」と一言言えばいい。それだけで動いてもらえます。
中山社長の200万円は、誰かが不正をしていたわけでも、特別な交渉をしたわけでもない。ただ「確認する人間がいなかった」だけの話です。
今期中に、一度だけ課税明細書を引っ張り出してみてください。意外なところにお金が眠っているかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。