先日、愛知県で製造業を営む社長からこんな連絡が来ました。「固定資産税が200万円も戻ってくるって、本当ですか?」——はじめはにわかに信じられなかったそうですが、これは実際に起きた話です。
15年間、ずっと払い過ぎていた
その社長、仮に鈴木社長と呼ばせてください。愛知県内に自社工場を持ち、15年以上にわたって固定資産税を払い続けてきました。毎年の金額はほぼ変わらず、「そういうものだ」と思って疑ったことがなかったといいます。
転機は、知人の税理士に「一度、評価内容を確認してみましょう」と言われたこと。市役所から取り寄せた明細を専門家が精査すると、すぐに異変に気づきました。工場敷地の一部が、誤って「宅地」として課税されていたのです。
工業用地と宅地では評価の仕組みが異なり、宅地のほうが課税標準が高くなりやすい。15年間、余分な税金を払い続けていた計算になります。
中小企業の約40%が払い過ぎている
驚かれるかもしれませんが、中小企業オーナーの約40%が固定資産税を過払いしているという調査があります。なぜそんなことが起きるのか、主な原因は3つです。
地目(土地の用途)の誤り。役所の台帳が実態と合っていないケースは珍しくありません。評価額の計算ミス。3年に1度の評価替えの際にエラーが生じることがあります。建物の経年劣化が反映されていない。古い建物なのに評価額がほとんど下がっていないこともあります。
固定資産税は、所得税や法人税と違って「自分で申告する税金」ではありません。市区町村が勝手に計算して請求してくる仕組みです。だから間違いがあっても、誰も気づかずにそのまま払い続けてしまう。これが過払いが多い根本的な理由です。
異議申立てで200万円が還付された
鈴木社長のケースに戻りましょう。専門家のサポートのもと、市役所に対して「審査請求(異議申立て)」を行いました。地方税法には固定資産税に関する不服申立ての手続きが定められており、一定の要件を満たせば過去に遡って還付を求めることができます。
還付の時効は5年。鈴木社長の場合、過去5年分の過払い分が認められ、最終的に総額200万円が戻ってきました。手続きに要した時間はおよそ半年。専門家報酬を差し引いても、手元に残ったお金は相当なものだったといいます。
「うちは大丈夫」と思ったら要注意
「うちはそんなことないだろう」と思う方も多いかもしれません。でも、固定資産税の評価は3年に1度しか見直されないため、その間に実態との乖離が生じやすい構造になっています。
特に以下に当てはまる会社は、一度確認することをおすすめします。
- 自社所有の工場・倉庫・土地を持っている
- 建物を取り壊したり、用途を変えたことがある
- 10年以上、固定資産税の明細をじっくり見たことがない
毎年届く納税通知書を、金額だけ確認して終わりにしていませんか。「評価額」「地目」「課税標準額」といった項目まで目を通している社長は、じつはほとんどいないのが実情です。
まず手元の明細から一歩踏み出す
取り返すための手順はシンプルです。まず市区町村の窓口で「固定資産税評価証明書」を取得し、所有不動産の地目・評価額・課税標準額を確認します。そのうえで、実態(用途・構造・経年)と照らし合わせてくれる専門家に相談する。これだけです。
「相談してみたら何もなかった」という結果でも損は小さい。でも、もし見つかれば、数百万円単位で取り返せる可能性があります。固定資産税は毎年払うものだからこそ、一度しっかり確認しておくことが長期的な節税につながります。
今年の納税通知書が届いたタイミングで、一度専門家に評価内容を見てもらうことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。