先日、自社ビルを持つ社長からこんな相談を受けました。

「毎年きちんと固定資産税を払ってるんですが、税理士から『もしかしたら払いすぎているかもしれない』と言われて。どういうことですか?」

その社長は都内で小売業を営んでいて、自社ビルを1棟所有しています。固定資産税は「役所から来る通知書どおりに払うもの」という認識で、内容を疑ったことなど一度もなかった、とおっしゃっていました。

ところが評価の内容を精査してみると、特例の適用漏れが見つかりました。正しく計算し直した税額との差は、年間で約28万円。過去5年分に遡れば、140万円近い話になります。

役所が「間違える」理由

固定資産税の評価額は、3年ごとに見直されます。これを「評価替え」と呼び、直近の基準年度は2024年度です。

この評価替えの際、市区町村の担当者は管内の膨大な件数をまとめて処理します。その過程で、個々の物件の細かい事情が見落とされることがあります。役所が意図的に誤魔化しているわけではありませんが、チェック体制には限界があるのも事実です。

よくある見落としのパターンをいくつか挙げると、次のようなものがあります。

  • 小規模住宅用地の特例が一部の区画に適用されていない
  • 建物の用途変更が評価に反映されていない
  • 築年数に応じた経年補正が過小になっている
  • 土地の形状・傾斜・接道条件による減価が考慮されていない

どれも「言われてみれば」という話ですが、知らなければ一生気づかずに払い続けることになります。

年30万の差は、珍しい話ではない

自社ビルや工場・倉庫・駐車場など、複数の不動産を持つ社長にとって、固定資産税は決して小さな金額ではありません。

物件の規模や状況によって異なりますが、評価を見直すことで年10万〜50万円の差が出るケースは実際にあります。特に築年数の古い建物や、地目の変更があった土地、敷地の一部が宅地以外の扱いになっている土地では、見落としが起きやすい印象です。

そして怖いのは、過払いに気づかないあいだも毎年同じ金額が請求され続けることです。年30万円の差なら、5年で150万円、10年で300万円になります。これは「知っているかどうか」だけの差です。

確認するタイミングは年1回、4月が勝負

固定資産税の評価額を確認できる制度として、**毎年4月に設けられる「縦覧期間」**があります。

この期間中は、同じ市区町村内の他の土地・建物の評価額も参照できます。自分の不動産の評価が周辺の類似物件と比べて著しく高くないか、客観的に確認するための制度です。

そして、納税通知書が届いてから3か月以内であれば、固定資産評価審査委員会に「審査申出」を行うことができます。これが、評価の誤りを正式に争うための手続きです。期限を過ぎると、その年度の評価についてはもう争えません。通知書が届いたら早めに確認する、という習慣が重要です。

今すぐできることは、一枚の紙を引っ張り出すこと

難しい話のように聞こえるかもしれませんが、最初にやることはシンプルです。

手元にある固定資産税の納税通知書を引っ張り出してください。土地・建物それぞれの評価額と税額が記載されています。次に、それを税理士や不動産鑑定士に「この評価、一度見てもらえますか?」と一言投げかけてみてください。

それだけで、見落としが発覚することは少なくありません。固定資産税は毎年自動的に請求が届くため、「払って終わり」になりがちです。でも経営者として、毎年発生する固定コストを一度も検証しないのは、少しもったいない話だと思います。

まだ一度も評価内容を確認したことがないなら、今年4月の縦覧期間か、次の通知書が届いたタイミングで、専門家に相談してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。