先日、年商2億円の不動産会社を経営する社長からこんな相談を受けました。

「毎月の役員報酬を上げたいけど、税金と社会保険料でごっそり持っていかれる。手取りが全然増えない気がして」

これ、よくある話なんです。報酬を100万円増やしても、実際に手元に残るのは60万円前後。所得税率が高い層になると、それ以下になることもあります。

でも、報酬の「額」を変えなくても、「設計」を変えるだけで手取りを大幅に増やせる方法があります。今回はその中でも特に効果が大きい3つを紹介します。

第3位:出張日当規程を整備する

まず手をつけてほしいのが、旅費規程の整備です。

「日当」というのは、出張のたびに会社から支払われる手当のことです。これが旅費規程に基づいて支払われる場合、一定の範囲内であれば所得税も社会保険料もかかりません。

具体的な数字で見てみましょう。日当を1日3,000円に設定して、年間200日出張したとします。それだけで年60万円が、税も社保もかからない形で受け取れます。給与として受け取れば手取りは4割前後削られるので、実質的な節税効果は相当なものです。

注意点は、規程を形式的に作るだけではなく、実態を伴う出張であることが必要だという点です。日当の金額も「社会通念上合理的な範囲」でないと、税務調査で否認されるリスクがあります。同業他社の水準を参考にしながら設定するのが無難です。

第2位:役員社宅制度を使う

次に効果が大きいのが、役員社宅です。これは知っている社長も多いですが、「面倒そうで手を付けていない」方が意外と多い。

仕組みはシンプルです。会社が物件を借り上げて、そこを役員の住居として提供します。役員が会社に払う家賃(自己負担額)は、法定の計算式で算出した「賃貸料相当額」でOK。これが実際の家賃よりもずっと低く設定されます。

たとえば家賃20万円の物件を会社が契約した場合、役員の自己負担は月3万円前後になることも珍しくありません。差額の17万円は会社の経費になり、役員の課税所得には含まれません。年間に換算すると200万円超が経費化できる計算です。

自己負担ゼロにしてしまうと「現物給与」として課税される可能性があるので、きちんと法定家賃を計算して会社に払う形にすることが必須です。ここは税理士と一緒に確認しておいてください。

第1位:標準報酬月額を上限付近で設計する

最も大きなインパクトがあるのが、標準報酬月額の設計です。

厚生年金の保険料には、計算の上限があります。現在、報酬月額が65万円を超えると、それ以上報酬を上げても厚生年金保険料はもう増えません。上限に達してしまっているからです。

つまり、月65万円以上の部分は「社会保険料なしで受け取れる報酬」になります。報酬が月80万円でも月100万円でも、厚生年金保険料の額は変わらないということです。

健康保険にも同様の仕組みがあります(こちらの上限は厚生年金と異なります)。標準報酬をどこに設定するかは、将来の年金受給額や健康保険の給付にも影響するため、単純に「低ければいい」とは言えません。トータルで損をしない設計が重要です。

3つを組み合わせると、どうなるか

改めて整理すると、こうなります。

  • 出張日当(年200日×3,000円):年60万円の非課税収入
  • 役員社宅(家賃差額):年200万円超の経費化
  • 標準報酬月額の最適設計:社会保険料の過払いを防ぐ

単体でも効果はありますが、3つを組み合わせることで手取りの改善効果は積み重なります。年200万円の改善というのは、決して大げさな数字ではないのです。

これらはいずれも、適切な手続きを踏めば合法的に使える制度です。しかし、旅費規程の内容、社宅の賃料計算、標準報酬の設定タイミングなど、細部に落とし穴があります。

まだ出張日当規程を作っていない会社は、今期中に整備しておくことをおすすめします。社宅制度も、物件探しから契約まで時間がかかるので、動くなら早めに動いた方がいい。報酬設計は一度決めると変更に手間がかかる部分もあるので、「来期から変えよう」ではなく、今すぐ税理士に相談してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。