「法人成りしてみたけど、思ったより税金が減らないんですよね……」
先日、独立から3年目の社長にそう打ち明けられました。話を聞いてみると、法人成り自体は正解だったのに、運用の仕方がもったいなさすぎたんです。
法人格を取ることで、節税の選択肢は格段に広がります。でも「会社を作ればあとは勝手に節税できる」というわけではありません。むしろ、知らないまま運用していると、せっかくのメリットを半分以下しか享受できていないケースが珍しくない。
今回は、法人成り後に後悔する社長のミスをランキング形式でお伝えします。
3位:役員報酬を低く設定しすぎた
法人成りしたばかりの社長がやりがちなのが、「最初はとにかく低めにしておこう」という過小設定です。
気持ちはわかります。会社の資金を手元に残したい、社会保険料を抑えたい——そういう発想ですよね。でも、これが後になって大きな後悔を生む。
役員報酬には「定期同額給与」というルールがあります。原則として、事業年度開始から3ヶ月以内にしか変更できません。最初に低く設定してしまうと、その金額が1年間固定されてしまうんです。
しかもこのミスの本当の怖さは、退職金の算定基礎にまで響くことです。役員退職金の計算では最終月額報酬が重要な要素になるため、報酬が低いまま定着してしまうと、将来の退職金に数千万円単位の差が生まれます。
報酬設定は「今の節約」ではなく「将来の出口」まで見越して決める必要があります。
2位:役員社宅を使わなかった
「社宅なんて大企業の話でしょ?」と思っている社長、少なくありません。でも中小企業でも、社長個人が役員社宅制度を活用することは十分できます。
仕組みはシンプルです。自宅の賃貸契約を法人名義で結び、社長個人が会社に一定の賃料を払う形にします。こうすることで、家賃の50〜90%を会社の経費として計上できるんです。
たとえば月20万円の家賃なら、年間で最大216万円が経費になります。所得税・住民税・法人税の節税効果を合わせると、年間で70〜100万円程度の手取り改善につながることも珍しくありません。
毎月の生活水準をそのままにして、この制度を5年間使えばそれだけで数百万円の差になります。「知らなかった」では済まない損失です。
1位:退職金の準備を始めていなかった
ぶっちぎりの1位がこれです。「退職金?まだ先の話でしょ」と後回しにして、法人成りから10年経って慌てるケースが本当に多い。
役員退職金がなぜ節税の王様かというと、税制上の優遇が二重に効くからです。
まず「退職所得控除」。勤続30年であれば控除額は1,500万円になります。つまり退職金1,500万円までは、そもそも課税されません。さらにその超過分には「2分の1課税」が適用されます。退職金3,000万円を受け取っても、課税対象になるのは(3,000万円 − 1,500万円)÷ 2 = 750万円だけです。
役員報酬として同じ金額を受け取ると、総合課税でがっぽり税金を取られるのとは大違いです。20年・30年の長期で計画すれば、退職金こそが「最も手残りの厚いお金の受け取り方」になります。
退職金の原資確保には、小規模企業共済(月最大7万円、掛金全額所得控除)やオーナー向けの保険を組み合わせる方法が有効です。早く始めるほど有利なのは言うまでもありません。
法人成り自体は正解です。でも、法人格を持つだけでは何も変わりません。役員報酬の適正設定、役員社宅の活用、そして退職金の積み立て——この3つを早めに整えた社長が、5年後・10年後に「やっておいてよかった」と笑っています。
まだ手をつけていないものがあれば、今期中に一度税理士と見直してみることをおすすめします。タイミングが重要な制度ばかりですので、「来期から」と言っているうちに機会を逃すことになりかねません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。