先日、ある社長からこんな連絡がありました。「今期は利益も出たし、そろそろ自分の報酬を上げようと思ってるんだけど、いつまでに決めればいい?」

その方、3月決算の会社を経営されています。答えはシンプルです。「5月中に動いてください」と。

役員報酬は自由に変えられない

一般の従業員の給料と違い、社長の役員報酬には厳しいルールがあります。その名も「定期同額給与」。毎月同じ金額でなければ、損金(経費)として認められないというルールです。

たとえば4月から月80万円の役員報酬を受け取り始め、業績が好調だからと7月に突然100万円へ変更した場合。増額した20万円の部分は、法人の損金として認められません。会社のお金から払っているのに、税金の計算上は「なかったこと」にされてしまうわけです。

変えていいのは年に一度、その窓口は3ヶ月しか開かない

では、いつなら変えられるのか。原則は「事業年度の期首から3ヶ月以内」です。3月決算の会社(4月期首)なら、6月末が改定の期限になります。

ただし、役員報酬の改定には株主総会の決議が必要です。開催通知の送付、議事録の作成……形式を整えるには相応の時間がかかります。「6月末ギリギリに総会を開けばいい」と考えていると、書類の不備や確認漏れで間に合わないケースも出てきます。

現実的な締め切りは5月末、余裕を持つなら5月中旬ということになります。

期限を過ぎると、いくら損するのか

具体的な数字で考えてみましょう。月20万円の増額を検討していた社長のケースです。

年間にすると240万円の追加報酬になります。期限内に改定できれば、この240万円は全額、会社の損金になります。法人税の実効税率が34%の会社であれば、240万円 × 34% = 約82万円の節税効果が生まれます。

一方、7月になってから「やっぱり増やそう」と動いた場合はどうか。増額分の240万円は損金不算入となり、節税効果はゼロ。それどころか法人税を約82万円余計に払うことになります。5月中に動くかどうかだけで、手元に残るお金が80万円以上変わってくるのです。

「うちは家族経営だから」は危険な思い込み

たまに聞くのが、「どうせ同族会社だし、株主総会なんてやらなくてもいいでしょ」という声です。

しかし、税務調査が入ったときに議事録がなければ、正式な改定とは認められないリスクがあります。形式が整っていないまま役員報酬を増額すると、「定期同額給与の要件を満たしていない」と指摘される可能性があります。追加の法人税と加算税をセットで請求される最悪のシナリオも、決してゼロではありません。

家族経営であっても、手続きだけはきちんと踏んでおく必要があります。

今日確認してほしい3つのこと

まず自社の決算月と期首を確認してください。4月期首であれば、6月末が改定の期限です。次に、今期の報酬を変えるかどうかの意思決定。そして顧問税理士への連絡と株主総会のスケジュール調整です。

「最近忙しくてまだ税理士に連絡していない」という社長、今日中に電話してみてください。まだ5月であれば、十分間に合います。役員報酬の改定は、誰かが自動的にやってくれるわけではありません。社長自身が気づいて動かないと、毎年チャンスを逃し続けることになります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。