先日、3月決算の製造業を経営する社長から、こんな相談を受けました。
「今期は業績が読めてきたから、そろそろ役員報酬を上げようと思っている。秋くらいに変更すればいいかな?」
思わず手を止めました。秋では、もう手遅れです。
役員報酬には「変更できる期間」が決まっている
役員報酬を会社の経費(損金)として認めてもらうには、「定期同額給与」という条件を満たす必要があります。毎月同じ金額を支払い、かつ期首から3ヶ月以内に金額を確定させる——これが税法上のルールです。
3月決算の会社であれば、期首は4月1日。そこから3ヶ月後の6月30日が変更期限になります。今日が4月22日ですから、残りは69日。2ヶ月ちょっとしかありません。
「まだ2ヶ月あるなら余裕じゃないか」と思う方も多いのですが、実際には株主総会の決議が必要で、その準備や顧問税理士との確認を含めると、実質的に動ける時間はずっと少ない。
期限を過ぎるとどうなるか
6月30日を1日でも過ぎてから役員報酬を増額した場合、その増額分は全額が損金不算入になります。
たとえば、月50万円だった役員報酬を月70万円に上げたとします。増額分は月20万円、年間で240万円。この240万円が経費として認められず、まるまる法人税の課税対象になります。実効税率30%で計算すると、約72万円の税負担増です。
「ちょっと待てば良かった」では取り返しがつきません。税務調査で指摘されると、過去に遡って否認されるリスクもあります。
「業績を見てから決めたい」は通用しない
多くの社長が「もう少し業績が見えてきてから決めたい」とおっしゃいます。気持ちはよくわかります。ただ、役員報酬の税法ルールは、そういう経営感覚とは相性が悪い。
ある程度の幅を持たせて早めに決める、もしくは業績連動型の報酬設計にするなど、打ち手は複数あります。大切なのは、期限内に何らかの意思決定をしておくことです。
変更しない場合でも、「据え置く」という決定を株主総会の議事録に残しておくことで、後々のトラブルを防げます。
今すぐ確認してほしい3つのこと
- 自社の決算月を確認する(期首から3ヶ月以内が期限)
- 役員報酬を変更する場合、株主総会の日程を税理士と確認する
- 変更しない場合でも、据え置きの決議と議事録を整備しておく
変更のタイミングや金額設定は、社会保険料との兼ね合いも出てきます。報酬を上げれば手取りが増えるとは限らない——そのバランスを整理するためにも、顧問税理士に「今期の役員報酬の方針を確認したい」と一本連絡を入れるのが最善です。
残り69日。動くなら今です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。