法人成りして2年目という社長から、こんな相談を受けたことがあります。「顧問税理士に勧められて会社を設立したのに、個人事業のころより手取りが減った気がするんですよね……」

話を聞いてみると、思い当たる節が3つありました。どれも「知っていれば防げた」ミスです。法人成りを検討中の方も、すでに法人化した方も、ぜひ一度確認してみてください。

3位:役員報酬を高く設定しすぎた

法人成りの大きなメリットのひとつが、役員報酬として自分に給与を払うことで、法人の利益を圧縮できる点です。「報酬が高いほど節税になる」と考えるのは自然なことですが、これが落とし穴になります。

役員報酬を月100万円に設定した場合、社会保険料は会社と個人を合わせて年間約250万円に上ることがあります。所得税・住民税と合算すると、想定していた節税効果が大幅に縮んでしまいます。個人事業主のころは払わなくてよかった分まで負担が増えた、という状況に陥りやすいのです。

さらに厄介なのは、役員報酬は原則として事業年度中に変更できないという点です。期の途中で「やっぱり下げたい」と思っても、税務上の損金算入が認められなくなるリスクがあります。翌期の開始時まで待つしかありません。

法人成りの際は、「報酬額 × 税率」だけで考えず、社会保険料のシミュレーションを必ずセットで行うことが重要です。手残りが最大になる報酬設計は、意外と高くない水準に落ち着くことが多いものです。

2位:決算月の選び方を間違えた

「決算月なんて何月でもいい」と思っていませんか。実はこの選択が、数十万円単位の差を生むことがあります。

法人を設立してから最初の2期間は、消費税が原則として免税になります。しかし、その免税期間の長さは、設立月と決算月の組み合わせによって大きく変わります。うまく設計すれば最大24ヶ月の免税を享受できますが、組み合わせが悪いと実質13ヶ月程度で終わってしまうケースがあります。

売上規模によっては、この差だけで消費税の納税額が数十万円から100万円を超えることもあります。「3月決算が多いから」「なんとなく年度末に合わせた」という理由で決算月を決めると、大きな機会損失につながりかねません。

設立前に税理士と相談して、決算月を戦略的に決めることが鉄則です。一度設定してしまうと変更の手続きも必要になりますし、最初の設計が肝心です。

1位:個人資産を法人に安く譲渡して課税された

これが最も多く、かつダメージが大きいミスです。実際にこのケースで青ざめた社長を、私は何人も見てきました。

「法人成りするから、今まで使っていた機械や備品を会社に移そう」と考えるのは自然なことです。しかし、時価500万円の機械を100万円で法人に売ると、個人には「500万円で売ったもの」として課税される可能性があります。

税務上は、極端に低い価格で法人に資産を移しても、時価で取引したとみなされるルールがあります(みなし譲渡課税)。手元にほとんどお金が入っていないのに、多額の譲渡所得税が発生するという最悪の事態です。

法人成りの際に資産を移す場合は、時価評価・適正価格の設定・税負担の試算を事前に行うことが必須です。「とりあえず安く売っておけばいい」は通用しません。これは絶対に、法人設立の前に税理士に確認してください。


法人成りは正しく設計すれば非常に強力な節税手段になります。しかし「なんとなく会社を作った」だけでは、今回紹介したミスに簡単にはまってしまいます。

これから法人成りを検討している方は、役員報酬・決算月・資産の移し方の3点を必ず事前に専門家とシミュレーションしてから設立してください。すでに法人化している方も、現状の設計を一度見直してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。