「法人化したのに、税負担が全然変わってないんですよね」
先日、年商3,000万円の個人事業主の方からそんな相談を受けました。法人設立から半年が経ったというのに、節税の実感がまったくないと言うのです。話を掘り下げてみると、よくある失敗パターンをきれいに3つ踏んでいました。
法人成りは確かに節税の有力な選択肢です。でも「設立さえすれば税金が自動的に減る」と思い込んでいると、むしろ損をすることがあります。今回は、相談の現場でよく見かける後悔パターンをランキング形式でご紹介します。
3位:役員報酬を高く設定しすぎた
法人化した直後、「せっかくなら報酬をたくさん取ろう」と考える方は多いですが、これが思わぬ落とし穴になります。
役員報酬を上げるほど、社会保険料の負担も比例して増えます。健康保険と厚生年金を合わせると、会社と個人の合計負担は標準報酬月額のおよそ30%。月80万円の報酬なら、毎月24万円以上が社保に消える計算です。
さらに気をつけたいのが、法人側の税率です。法人の課税所得が800万円を超えると、実効税率は一気に約34%まで跳ね上がります。報酬を低く設定しすぎて法人にお金を残しすぎると、この高い税率の帯に入ってしまいます。
役員報酬は「高すぎても低すぎてもNG」が基本です。個人の所得税・住民税と法人税のバランスを試算しながら決める必要があります。しかも原則として年度途中の変更はできないため、設定は慎重に。税理士に試算してもらい、年度ごとに最適な金額を出し直すのが正解です。
2位:個人口座で法人の経費を払い続けた
「法人化したけど、口座を分けるのが面倒で…」という社長は想像以上に多いです。個人のカードでそのまま経費を立て替え、月末にまとめて精算すればいい、と考えているパターンです。
これは税務調査で最初に目をつけられる点のひとつです。個人と法人の資金が混在していると、どの支出が法人の経費でどれが個人の支出なのか判断が難しくなります。結果として、本来計上できたはずの経費が漏れてしまい、余分な税金を払うことになりかねません。
法人名義の専用口座と法人カードは、設立初日から用意しておくのが鉄則です。日々の会計作業もラクになりますし、経費の証明力も格段に上がります。「あの領収書はどっちの分だったっけ」と悩む時間が、まるごとなくなります。
1位:法人設立後に社会保険へ加入しなかった
これが最も深刻なミスです。個人事業主の頃は国民健康保険・国民年金でしたが、法人を設立した瞬間から社会保険(健康保険・厚生年金)への加入は法律上の義務になります。役員1人だけの小さな会社でも、例外はありません。
「従業員がいないから関係ない」「売上が少ないうちは猶予がある」は完全な誤解です。年金事務所の調査や税務調査で発覚した場合、過去最大2年分の未納保険料を追徴されるケースがあります。2年分となると、数百万円規模になることも珍しくありません。
悪意なく「知らなかった」という状態でも容赦はありません。法人を設立したら、速やかに管轄の年金事務所へ届け出るか、社労士・税理士に手続きを依頼してください。
「設立後」に起きる失敗が一番怖い
法人成りで痛い目を見るケースの多くは、設立前ではなく設立後に起きます。計画段階はしっかりしていても、実際に走り始めてから穴が見つかる、というパターンが典型です。
特に社会保険の未加入は、数年後に突然追徴という形でやってくることがあります。役員報酬の設定ミスも、1年目の決算で初めて気づくことが多い。どれも「知っていれば防げた」失敗です。
法人を設立したばかりの方も、すでに数年が経過している方も、一度自社の状態を棚卸ししてみることをお勧めします。まだ顧問税理士がいないなら、1期目のうちに契約しておくのが最善の選択です。月々のコストは発生しますが、ミスひとつで数百万円の損失になることを考えれば、確実に元が取れます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。