先日、こんな相談を受けました。「父が経営者で、土地をいくつか持っていたんですが、相続手続きをしてみたら思っていたより相続税がかかってしまって……」
こういった話、決して珍しくありません。でも、あと数年早く動いていれば、大きく節税できたケースでした。今日は、不動産の「持ち方」が相続税にどれほど影響するか、具体的な数字でお伝えします。
個人名義の土地は「路線価」で評価される
個人名義で土地を持っている場合、相続税の計算に使われるのは「路線価」です。路線価とは国税庁が毎年公表する土地の評価額のことで、一般的に市場価格の80%程度といわれています。
一見「市場価格より低く評価されるなら有利では?」と思うかもしれません。ところが、これはあくまで出発点に過ぎません。
問題は、法人名義で不動産を保有した場合と比較したときに浮かび上がってきます。
法人で持てば評価額を40%以上圧縮できることも
不動産を法人名義で保有している場合、相続税の評価対象は「その法人の株式」になります。法人株式の評価には「純資産価額方式」や「類似業種比準方式」といった手法が使われますが、不動産を保有する法人を適切に設計すれば、個人名義と比べて評価額を40%以上圧縮できるケースがあります。
要するに、同じ土地でも誰の名義で持つかによって、相続税の計算基準がまったく変わってくるのです。
差額が2,800万円になるケース
具体的に数字で見てみましょう。
市場価格が1億円の土地を個人名義で保有していた場合、路線価ベースでおよそ8,000万円として評価されます。
一方、同じ土地を法人名義で保有し、適切に設計していれば、株式評価額が4,000〜5,000万円程度になるケースがあります。この評価額の差は約3,000〜4,000万円。相続税率や他の資産との兼ね合いによって変わりますが、最終的な相続税額の差が2,800万円以上に達することも珍しくありません。
これだけの金額が「不動産の持ち方を変えるだけ」で変わってくるというのは、知っているかどうかだけで結果が大きく変わる話だと思います。
なぜ「引退前に動く」ことが重要なのか
相続が発生してからでは、基本的に手遅れです。名義変更も評価の組み替えも、生前に行っておく必要があります。
また、法人に不動産を移すには「売却」という形をとることが多く、そのためには法人側の資金調達や、登録免許税・不動産取得税といった移転コストも発生します。急いで動くとかえって損をするケースもあるため、余裕をもって引退の5〜10年前から準備しておくのが理想です。
60代に差し掛かった経営者の方には、特にこの話を早めに知ってほしいと思っています。
すでに個人名義で持っている方も諦めないで
「もう個人名義で持ってしまっているから今さら……」という声もよく耳にします。でも、諦める必要はありません。
資産管理会社(プライベートカンパニー)を設立し、そこに不動産を段階的に移していく手法は、50〜60代の経営者でも積極的に取り組まれています。移転にかかるコストと節税効果を比較して、トータルでメリットがあるかどうかを試算するのが最初のステップです。
「うちはたいした資産じゃないから」と思っている方も、一度専門家に評価額を出してもらうと驚くケースがあります。地価の上昇もあって、自分の想定より評価額が大きかったというのはよくある話です。
まだ不動産の持ち方を整理していないなら、引退を考え始めた今が動き時です。「やっておけばよかった」という後悔だけは、どうか避けてほしいと思います。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。