先日、資産管理にとても几帳面な60代の社長からこんな相談を受けました。「生命保険には入っているから相続対策はバッチリだと思っていたんですが、本当に大丈夫でしょうか?」と。
確認してみると、保険の受取人の設定が意図していない形になっていて、非課税枠がまるごと使えない状態だったんです。本人はずっと「対策済み」のつもりでいたわけですから、これはかなり痛い見落としでした。
生命保険を使った相続税対策は、シンプルで効果が高い代表的な手法です。ただ「入っているだけ」では意味がなく、細かい設定を間違えると、せっかくの非課税枠が一円も使えないこともあります。今回はよくある失敗パターンを3つ、具体的にお伝えします。
3位:受取人が「相続人」になっていない
生命保険には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があります。これは相続税の計算において、受け取った保険金のうちその金額までを課税対象から外せる、非常に強力なルールです。
ただし、このルールが使えるのは受取人が相続人である場合に限られます。孫や内縁の配偶者を受取人にしていると、この非課税枠は適用されません。
「孫にも財産を残したい」という気持ちはよくわかります。ただ、孫は原則として法定相続人ではないため、孫が受取人の保険金は全額が相続税の対象になってしまいます。意図と節税効果が食い違っている、典型的なパターンです。
2位:法定相続人の人数を間違えている
非課税枠の金額は人数で決まります。相続人が3人なら上限は1,500万円、4人なら2,000万円です。この人数の数え方を誤ると、節税できる金額そのものがズレてしまいます。
よくある間違いが、「今の家族だけ」で数えてしまうケースです。実は、過去に離婚した前妻との間に子がいれば、その子も法定相続人に含まれます。また、養子縁組をしている場合も相続人に加わります(ただし養子は一定人数までという制限があります)。
戸籍を丁寧に確認しないと、知らないうちに相続人の数を少なく見積もってしまうことがあるんです。逆に言えば、正確に把握するだけで非課税枠が広がるケースもあります。面倒でも、一度しっかり確認する価値があります。
1位:そもそも生命保険を活用していない
これが一番もったいないパターンです。現預金をそのまま持ち続けているだけで、何の対策もしていない社長が実は少なくありません。
現預金は相続財産にそのまま含まれ、全額が課税対象になります。一方、同じ金額を一時払いの終身保険などに換えておくだけで、非課税枠の分だけ課税対象を圧縮できます。たとえば相続人が3人いれば、1,500万円分の保険金が課税対象から外れるわけです。
仮に相続税の実効税率が20%だとすれば、それだけで300万円の差になります。「保険に入る」という行動一つで、数百万円単位の節税効果が生まれることは珍しくありません。
整理するなら今がタイミング
生命保険による相続対策は、健康状態によっては加入できなくなるリスクがあります。「いつかやろう」と思っているうちに、選択肢が狭まってしまうこともあるんです。
まず確認してほしいのはこの3点です。
- 受取人は法定相続人になっているか
- 法定相続人の人数を正確に把握しているか
- 現預金の一部を保険に振り替える余地がないか
どれも難しい話ではありませんが、「なんとなく大丈夫だろう」という感覚で放置しているケースが本当に多いです。
まだ生命保険の非課税枠を本格的に活用していないなら、今期中に一度、保有資産の構成を見直してみることをおすすめします。税理士や保険の専門家と一緒に確認するだけで、思いがけない節税余地が見つかることがありますよ。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。