先日、顧問先の奥様からこんな連絡をいただきました。「主人が急に亡くなって、相続税の申告は税理士に頼んだんですが、会社の税金のことは誰も教えてくれなくて…」

話を聞いてみると、法人税の申告期限をとっくに過ぎていたんです。延滞税と無申告加算税を合わせると、思わぬ出費になってしまいました。こういうケース、実は珍しくありません。

相続が発生したとき、多くの人が頭に思い浮かべるのは「相続税の申告」だけです。でも、オーナー社長が亡くなった場合には、そこにさらに2つの申告が重なってきます。今日はこの「3つの申告期限」について、ざっくりお伝えしたいと思います。

相続税だけじゃない。3つの申告が同時にやってくる

オーナー社長が亡くなると、遺族が対応しなければならない税務申告は大きく3つあります。

まず誰もが知っている相続税の申告。期限は相続発生から10ヶ月以内です。財産の棚卸しから始まって、遺産分割の協議もあるので、10ヶ月でも意外とギリギリになることが多いです。

次に、社長個人の所得税・準確定申告。亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について確定申告が必要で、期限は相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。毎年2月〜3月に自分でやっていた確定申告を、今度は遺族(相続人)が代わりに行うイメージです。

そして意外と見落とされるのが、3つ目の法人税の申告です。

「みなし事業年度」という落とし穴

会社の決算が12月でも3月でも、社長が亡くなった時点で話が変わってきます。

税法上、代表者である社長が死亡すると、その時点で事業年度が区切られることがあります。これを「みなし事業年度」と呼びます。たとえば3月決算の会社で社長が10月に亡くなった場合、4月〜10月の半端な期間で一度決算を締めて申告しなければならないんです。

この法人税申告の期限が、死亡から2ヶ月以内。4ヶ月の準確定申告よりもさらに短い。しかも会社の決算作業が急に発生するわけですから、経理担当者も税理士も大慌てになります。

準確定申告(4ヶ月)、法人税申告(2ヶ月)、相続税申告(10ヶ月)。それぞれ期限が違って、しかも同時進行で動き始めるわけです。

知らなかったでは済まない、延滞税の現実

期限を過ぎると何が起きるか、具体的に見てみましょう。

申告が遅れた場合、まず無申告加算税がかかります。納税額の15〜20%が上乗せされる、なかなか痛いペナルティです。さらに納付が遅れると延滞税も発生します。現在の延滞税率は年8.7%(令和6年時点の上限)なので、金額が大きいほどじわじわ膨らんでいきます。

「相続税の申告に集中していたら、法人税の2ヶ月がいつの間にか過ぎていた」というパターンが一番多いです。顧問税理士が個人専門で、法人税の申告まで対応できなかったというケースも実際にあります。

今すぐできる備えは「顧問税理士への確認」

こういったリスクに備えるために、今すぐできることが一つあります。現在の顧問税理士に「もし私が急に亡くなったとき、会社の法人税申告と準確定申告はどう動いてもらえますか?」と確認しておくことです。

税理士の立場から言うと、事前に話し合っておくだけで対応のスピードが全然違います。必要な書類の在り処、会社の印鑑の保管場所、後継者や経理担当者への引き継ぎルート。こうした「いざというときの段取り」を整えておくことが、遺族への最大の思いやりになります。

また、相続対策として生命保険や事業承継の準備を進めている方も多いと思いますが、税務申告のスケジュール管理まで含めて相談できる税理士を一本化しておくのが、実はいちばんシンプルな対策です。

相続は「もしも」の話ではなく、すべての社長に必ず訪れる現実です。3つの申告期限を誰が、いつ、どう動いて処理するか——ぜひ今期中に顧問税理士と一度すり合わせておいてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。