ある日、知り合いの製造業の社長からこんな話を聞きました。「税理士が変わったついでに、昔の申告書を見てもらったら、300万円が戻ってきた」と。

「えっ、もう申告済みの分が返ってくるんですか?」と最初は半信半疑でしたが、これは「更正の請求」という正当な制度を使った、立派な税務手続きでした。申告を一度出したら終わり、ではないのです。

機械設備の「耐用年数」の誤りが、何年も積み重なっていた

その社長、仮に田中さんとしましょう。製造業を10年以上営んでいて、売上も安定。税務上の大きなトラブルもなく、「まあ、普通の会社かな」という感じでした。

ところが、顧問税理士が引退して新しい先生に変わったのを機に、過去5年分の申告書を一から見直してもらったところ、見落としが発覚しました。

問題は、数年前に導入した製造設備の「耐用年数」です。耐用年数とは、設備や機械を何年かけて経費にするかを決める年数のこと。短ければ早く経費化できる、つまり早めに節税できます。逆に長すぎると、本来もっと早く落とせた経費が後ろにずれてしまいます。

田中さんのケースでは、設備の種類に応じた正しい耐用年数よりも長い年数が設定されていました。毎期の減価償却費が少なめに計上され続けた結果、毎年「余計に税金を払い続けていた」状態だったわけです。

更正の請求で、納めすぎた法人税を取り戻す

申告書を一度出したら変更できない、と思っている方は多いと思います。でも実はそうではありません。

更正の請求とは、過大に申告して税金を払いすぎていた場合に、申告内容の修正を税務署に求められる制度です。法定申告期限から5年以内であれば遡って請求できます。

法人の場合、決算から2ヶ月以内が申告期限です。3月決算なら5月末が期限になりますから、そこから5年以内に誤りに気づけば、更正の請求が使えます。

田中さんのケースでは、耐用年数の誤りが3期分にわたっていました。新しい税理士が丁寧に計算し直したところ、本来より多く納めていた法人税の累計が約300万円に上ることが判明。更正の請求を行った結果、その全額が還付されました。

申告書に眠りやすい「3つの見落とし」

田中さんのケースは耐用年数の誤りでしたが、申告書の見直しで税金が戻ってくるケースはほかにもあります。

ひとつ目は減価償却の誤りです。耐用年数の間違いに加え、中小企業向けの特例(少額減価償却資産の特例など)を使い忘れているケースも少なくありません。

ふたつ目は経費の計上漏れ。出張旅費、消耗品、業務用のソフトウェアや書籍など、経費にできるのに計上していなかったものが後から見つかることがあります。

みっつ目は交際費の処理ミスです。接待交際費は金額・人数・用途の記録が必要ですが、書類の整備が甘く有効な経費として扱われていなかったり、対象外のものを交際費にしてしまったりするケースが見られます。

いずれも「後から気づいても遅い」とあきらめる前に、まず税理士に確認してみることが大切です。

5年という時効は、思ったより早く来る

「うちの申告書は大丈夫だろうか」と思ったなら、直近5年分の申告書を顧問税理士に確認してもらうのが最善の一手です。田中さんのように顧問が変わるタイミングは特にチャンスですが、変わらなくても「念のため一度見直してほしい」と依頼することはできます。

特に設備投資をした期や、事業規模が大きく変わった年の申告書は念入りに確認する価値があります。スポットで申告書レビューを受け付けている税理士事務所も増えていますので、セカンドオピニオンとして活用するのも一つの手です。

5年という期限は意外と早く過ぎていきます。思い当たるふしがあれば、今期中に動いてみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。