先日、年商3億円ほどの製造業の社長と話していたとき、こんな一言が出ました。「役員報酬って、毎年なんとなく同じ金額にしてるんですよね」。思わず「その”なんとなく”が一番もったいないですよ」と返してしまいました。\n\n役員報酬は、社長が合法的に手を打てる節税手段の中でも、特に効果が大きいものです。ただ、ルールを正確に理解していないと、毎年じわじわと余分な税金を払い続けることになります。\n\n## 変更できるのは年に一度、3ヶ月間だけ\n\n法人税法では、役員報酬を損金として認めてもらうための要件として「定期同額給与」があります。これは、事業年度の開始から3ヶ月以内に変更しなければならないというルールです。3月決算なら4〜6月が唯一のウィンドウ。12月決算なら1〜3月です。\n\nこの期間を過ぎてから変更してしまうと、増額分・減額分が損金として認められなくなる可能性があります。「10月に利益が膨らんできたから報酬を上げよう」と思っても、税務上はアウト。1年間、同じ金額で固定されてしまいます。\n\n「知らなかった」では済まない話なので、まずここだけは押さえておいてください。\n\n## 業績が変わっているのに、報酬が変わっていない\n\n次によくあるのが、「前年と同じ金額」でそのまま更新するパターンです。\n\n役員報酬の最適額は、会社の業績によって変わります。法人所得が800万円を超えると、法人税の実効税率は約34%になります。一方、社長個人が受け取る報酬には給与所得控除が適用されるため、所得水準によっては、利益を法人に残すより報酬として受け取った方が有利になるケースがあります。\n\nただし、上げすぎも禁物です。報酬が増えれば個人の所得税・住民税が跳ね上がります。高すぎても低すぎても損をする——これが役員報酬設定の難しさです。\n\n今期の利益見込みを昨年と比べて大きく変わるようであれば、見直しを検討する余地があります。このシミュレーションを毎年やるかやらないかで、年間の手取りが数十万〜数百万円変わることがあるんです。\n\n## 「税理士に言われた金額のまま」が一番多く、一番損をする\n\nそして最も注意してほしいのが、このパターンです。\n\n税理士から提案された金額を深く考えずにそのまま更新し続けている——これが実は最も多いケースです。担当税理士が毎年きちんと最適化してくれているなら問題ありません。ただ、「前年と大きく変わらないなら変えない」というスタンスの税理士も少なくありません。\n\n年間利益が1,000万円を超える法人では、役員報酬の最適化だけで年間200万円以上の税負担差が出ることがあります。所得税と法人税の税率構造から計算できる、現実的な数字です。\n\n「任せっきり」ではなく、「自分でも理解した上で一緒に考える」姿勢が、長い目で見たときに大きな差を生みます。次の打ち合わせで、一度「今期の最適な役員報酬額を教えてください」と聞いてみてください。その一言が、思わぬ節税につながることがあります。\n\n## 今年の4月、まだ間に合いますか?\n\n3月決算の会社なら、4〜6月が役員報酬を変更できる唯一のチャンスです。この記事を4月中に読んでいるなら、まだ間に合います。\n\nまずやることはシンプルです。今期の利益見込みを税理士に伝え、「最適な役員報酬はいくらになりますか?」と確認する。それだけです。たったこれだけで、年間の税負担が変わる可能性があります。\n\n毎年4月を「なんとなく去年と同じ」で過ごしてきた社長は、ぜひ今年こそ行動してみてください。その一手間が、数年後の手取りに大きな差をつけることになります。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。
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