先日、年商10億ほどの製造業を営む社長から、こんな相談を受けました。「自社株を持っていて、今年ようやく配当を出したんですが、個人で受け取ったら税金が思ったより多くて。持株会社を作ると変わると聞いたんですが、本当ですか?」

その通りです。個人で配当を受け取るか、持株会社を通じて受け取るかだけで、税負担はまったく異なります。答えを先に言えば、年間500万円の配当を受け取るケースで持株会社を活用すると、年100万円以上の節税につながることがあります。

個人で配当を受け取ると、何が起きるか

日本の所得税は累進課税制度です。配当所得は他の所得と合算されるため、すでに高い税率がかかっている社長にとっては、追い打ちをかけるように課税されます。

所得税と住民税を合わせた実効税率が高い層では、配当500万円に対して約100万円の税金が生じることも珍しくありません。つまり、配当という形でお金を受け取るたびに、5分の1が税金として消えていく計算です。

「配当を出すより内部留保に回した方がいいのでは」と感じている社長も多いですが、持株会社という選択肢を知ると、話が変わってきます。

持株会社を通じると、配当課税がほぼゼロになる

持株会社(ホールディングカンパニー)が子会社から配当を受け取る場合、「受取配当等の益金不算入制度」という仕組みが適用されます。

これは、法人が一定の要件を満たした株式から受け取る配当を、法人税の課税所得に含めなくていいというルールです。持株会社が子会社株式を100%保有している場合、受け取った配当はほぼ全額が非課税扱いになります。

個人では約100万円の税負担が発生していた配当500万円が、持株会社を通じると実質ゼロになる。この差はかなり大きいと思いませんか。

もちろん、持株会社に溜まった資金をどう活用するかは別途設計が必要ですが、グループ内に資金を蓄積しながら再投資する器として機能させることができます。

役員報酬を「分散」するとさらに節税になる

持株会社スキームのメリットはもう一つあります。役員報酬の分散効果です。

社長が事業会社1社から年収3,000万円を受け取るより、持株会社と事業会社の2社からそれぞれ1,500万円ずつ受け取る方が、所得税の累進課税が緩和されます。高い税率がかかる所得域を2社に分散できるためです。

この役員報酬の分散だけで、年間30〜50万円の追加節税になるケースがあります。配当の節税効果(約100万円)と合わせると、合計で年間100万円を超える節税が現実的に狙える計算です。

コストと費用対効果をきちんと見積もる

ここで大事なのが、持株会社の設立・維持コストです。

設立時には登記費用などが数十万円かかり、毎年の決算・申告費用(税理士報酬)も2社分発生します。会計・税務の手間も増えるため、コストを織り込んだ上で本当に節税効果が出るかを試算する必要があります。

節税が年100万円でも、維持コストが年60〜70万円かかれば、実質的な手取り増加は30〜40万円です。それでも十分なケースは多いですが、規模や状況によって「やる価値があるか」は変わります。

また、株式移転のタイミング(株価が高い時期は設立コストが上がる)や、事業承継・相続との組み合わせ方なども重要な検討事項です。

こんな社長に向いている

持株会社スキームが特に効果的なのは、次のような条件が重なる場合です。

自社株から配当を受け取っている、または今後配当を出す予定がある社長。個人の所得が高く、累進課税の影響を強く受けている社長。グループ全体の資産管理や将来的な事業承継を視野に入れている社長。この3つが重なるなら、試算する価値は十分あります。

今まで個人で全額配当を受け取ってきたなら、今期の決算前に「持株会社を作った場合のシミュレーション」を税理士に依頼してみてください。対応している税理士かどうかで、提案の深さはかなり変わります。専門家への相談の一歩が、年100万円以上の差になるかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。