先日、ある不動産オーナーから「税務署から電話が来た。調査に伺いますって言ってる」と連絡が入りました。その方は特別なことをしていたわけではない——少なくとも本人はそう思っていました。\n\nアパートや一棟マンションを複数お持ちの方は、税務調査のリスクが一般の法人オーナーよりも高いことを知っていますか。年収1,000万円を超えて不動産を保有するオーナーは、税務署にとって「優良な調査対象」として目に映りやすいのが現実です。\n\n今回は、実際の調査でよく問題になる3つの”トリガー”をお伝えします。\n\n## 修繕費を一括で全額計上していた\n\n大阪でアパートを4棟所有する58歳のオーナーのケースです。外壁塗装と水回りのリフォームで合計480万円を支出し、その全額を修繕費として一括計上していました。\n\n税務署が「修繕費」として認めるのは、あくまで現状回復のための工事です。価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする改良工事は「資本的支出」として減価償却が必要になります。1件あたり20万円未満、または3年周期で定期的に行われる工事であれば一括計上できますが、480万円の工事を根拠なく全額経費にすれば、調査官の目には「意図的な所得圧縮」と映ります。\n\n修繕費か資本的支出かの判断は、工事の内容と金額の両面で検討が必要です。領収書と工事明細を保管しておくのはもちろん、判断に迷う案件は事前に税理士へ相談するのが賢明です。\n\n## 奥さま名義の管理会社に年240万円を支払っていた\n\n同じオーナーは、奥さまが代表を務める管理会社に年間240万円を支払っていました。法人を使った所得分散自体は合法的な節税手法のひとつです。\n\nただし、「実態がない」とみなされると話が変わります。奥さまが実際に管理業務を行っているか。業務の範囲と報酬が市場相場と比べて妥当か。契約書や業務日報はあるか——こうした点が調査官に問われます。\n\n「名前だけ貸している」「実際は何もしていない」となれば、支払った240万円は全額否認されるリスクがあります。形式だけ整えて実態が伴わない取引は、かえって調査官に疑念を持たせる結果になりかねません。\n\n## 現金家賃の一部が申告から漏れていた\n\n3つ目は、現金で受け取った家賃の一部が申告されていなかったケースです。振込管理であれば通帳に記録が残りますが、現金収入はどうしても管理が甘くなりがちです。\n\n税務署は家賃収入を推計する独自の方法を持っています。固定資産税の課税明細、登記情報、地域の賃貸相場——外部情報と申告内容を照合し、説明のつかない乖離があれば調査の対象になります。「空室が続いていた」「リフォーム中だった」という理由があれば別ですが、その根拠を示せなければアウトです。\n\n## 3条件が重なると、追徴は320万円になった\n\nこのオーナーは3条件すべてが当てはまっていました。結果として追徴税額は重加算税(35%)込みで約320万円に上りました。\n\n重加算税とは、単純なミスではなく「意図的な隠蔽や仮装があった」と認定されたときに課される重いペナルティです。通常の過少申告加算税(10〜15%)とは次元が違います。さらに重加算税が課されると、調査対象期間が通常の3年から7年に延長されます。過去7年分を掘り返される可能性があるということです。\n\n## 「来てから対応」では遅すぎる\n\n修繕費の計上根拠、親族への業務委託の実態、現金収入の管理体制——どれか一つでも「少し怪しいかも」と感じたら、次の決算前に見直しておくことをおすすめします。\n\n税務調査は、来てから弁明しても取り消しはほぼ効きません。日頃から取引の実態を説明できる状態に整えておくこと、帳簿の根拠資料をきちんと保管しておくこと——それが最も確実な調査対策です。\n\n不動産を複数お持ちであれば、今期中に担当税理士と「調査リスク診断」を一度行っておくのが得策です。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。
関連記事
役員退職金に税務署が入る前に知っておくべき3つのリスク
役員退職金は正しく設計すれば最大2400万円超が非課税になる強力な節税策。しかし税務署が必ずチェックする3つの急所を外すと重加算税35%の追徴が待っています。...
税務調査7日間で3,000万円を失った社長の告白
製造業の社長が税務調査で3,000万円を追徴された実話。売上除外・架空外注費が発覚し重加算税40%が課された経緯と、今すぐできる3つの対策を解説します。...
修繕費で2,500万円追徴——法人不動産オーナーが陥る税務の落とし穴
法人で収益物件を持つ社長が修繕費と資本的支出を混同し、5年分の否認で2,500万円を追徴された実例をもとに、工事発注前に確認すべきポイントを解説します。...